クリニックブログ

  • 2026.02.17

新しい抗うつ薬のお知らせ(ザズベイカプセル)

代表的な脳内ステロイドである、アロプレグナノロンは、急性ストレス時に脳内で分泌が増加し、ストレスから神経を守る働きがあります。そのためアロプレグナノロンは天然の抗不安薬、抗うつ薬と呼ばれることがあります。アロプレグナノロンは急性のストレスで増加しますが、ストレスが長期間続くと分泌が低下してしまいます。しかし、適度な運動、瞑想、笑うこと、バランスの良い食事をとることでアロプレグナノロンを増加させることが出来ます。アロプレグナノロンは妊娠中に増加し、産後急激に低下することが知られています。そして産後うつ病になる女性では、血中アロプレグナノロンの濃度が低下傾向にあることも明らかになりました。そのためアロプレグナノロンを薬として補充して産後うつ病を治療する方法が考案され、実際に効果があることが証明されたのです。科学的な仮説から治療薬が生まれることは精神科治療ではきわめて稀なことです。これまでの抗うつ薬は、他の病気の治療中に偶然に見つかったものです。そして、これまでの抗うつ薬が脳内のセロトニンあるいはセロトニンとノルアドレナリンの神経伝達を促進させることが分かったのは後になってからでした。うつ病の原因は不明であり、複数の機序が関わっていると考えられています。今回、本邦で使用できるアロプレグナノロン類似薬は、脳内GABAA神経伝達を促進することで抗うつ作用を発揮するため、従来の抗うつ薬とは全く異なった作用機序を有しています。異なった作用機序の薬物が使用できることは、これまでの治療で改善しなかったうつ病の人に効果がある可能性があります。今回発売されるザズベイ(ズラノロン)は、アロプレグナノロン類似薬であり、2週間の投与により症状が改善することが期待できます。万能な薬ではありませんが、うつ病の薬物治療に進歩をもたらすものと言えます。

下の図に、GABAニューロンのシナプスにおけるザズベイの作用機序を示しました。

慢性ストレスにより、脳内ステロイドであるアロプレグナノロン(黄色)が減少、図中央にある2つのGABAA 受容体(シナプス下受容体)が減少、図左右のGABAA 受容体(シナプス外受容体)が増加、神経伝達物質であるGABA(青)の減少などが起こります。経口投与されたザズベイ(ズラノロン)(赤)はシナプス下およびシナプス外GABAA 受容体に結合し、神経細胞の活動を安定させ、うつ病を改善すると考えられています。