精神医学ニュース1

月経前不快気分障害(PMDD

 

月経前になるとひどくイライラして、怒りっぽくなる、対人関係で過敏になる、過食、過眠になる、時にひどく落ち込んだりするが、月経がはじまると嘘のように気分が落ち着く、こうした症状を繰り返す人がいることは、古くから知られていました。しかし、米国の精神医学会によって診断基準がつくられたのは比較的最近(2013年)の事です。

 

月経前不快気分障害(PMMD)の原因

 

原因は明らかになっていませんが、黄体期後期におこるエストロゲン、プロゲステロンの減少が関係していると考えられています(下図)。家族にうつ病の人がいる場合、PMMDになりやすいこと、セロトニンの神経伝達を増強する薬物(SSRI)がうつ病にもPMMDにも有効なことから、うつ病とPMMDに共通の脳内脆弱性(病気のなり易さ)があると推測されています。




米国精神医学会の診断基準

 

ほとんどの月経周期で、月経開始1週間前に以下の5つ以上の症状が出現し、症状は月経開始後数日以内に軽減、月経終了後にはほぼ消失する。

 

1 感情が著しく不安定
2
激しいイライラや怒りの感情
3
ひどい落ち込み、絶望感、自責感の高まり
4
異様な不安、緊張、興奮、いらだち感仕事・

5 学業・交友・趣味など日常活動への意欲低下
6
集中力低下
7
倦怠感、疲れやすさ、気力の欠如
8
過食、甘いものが異常に欲しくなるなど食欲の変化
9
過眠または不眠

 

また、これらの症状によって明らかな苦痛が認められ、対人関係、学校生活、仕事などの日常生活に大きな支障がある(症状があっても、日常生活に全く問題がなければ診断しない)。

診断するためには、月経2周期以上にわたり、記録して確認しなければならない。

 

基礎体温表による記録の例を下の図に示しました。




基礎体温表に、PMMDの症状を記入し、それが生理のおよそ1週間前に始まり、生理が始まると2-3日で消失することを確認します、そしてそれが生理周期に一致して繰り返されることが診断にとって重要です。

 

月経前不快気分障害(PMDD)の治療

 

生活習慣を見直す睡眠を十分にとり、規則正しい生活をする。可能であれば、午前中日光に当たる、

適度な運動習慣を身に付け、健康に良い食事をする(野菜を十分にとり、栄養バランスの良い食事をとる、カルシウム、マグネシウムが不足しないように)、カフェイン、アルコールの取り過ぎに注意する、喫煙は控える。

 

生活上のストレスを緩和する:認知行動療法、マインドフルネス、ヨガ、アサーショントレーニングなどの技法を用いてストレスを軽減する。過重労働であれば、仕事量を調整する。

 

薬物療法

婦人科による治療:低用量ピルをもちいる。排卵を止める少量の女性ホルモンを用いることにより、ホルモンの変動がなくなり、PMMDを予防することが出来る。当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、桃核承気湯、女神散、抑肝散などの漢方薬を用いる方法もある。

精神科による治療:上記の方法で改善しない場合は、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)を用いる。通常、うつ病に用いる量より少量を、生理の始まる1週間前から投与し、生理が始まったら中止する。PMMDからうつ病に移行する場合もあり、また、うつ病から回復した後にPMMDの症状が残ることもある。SSRIを用いた治療は、この薬物の効果、副作用について十分に経験のある精神科医が行うことが好ましい。




うつ状態とは

内科などの一般的医学の領域では、一連の症状から診断を推測し、身体診察、血液検査、画像検査など種々の検査を行い診断を確定します(下図1)。

一方、精神科の主要な病気である統合失調症、うつ病、躁うつ病、不安症などでは、血液検査、CT検査、脳波検査などをしても異常はありません(下図2)。つまり、精神科では診断のための信頼できる検査がありません。そこで、一連の症状からとりあえず○○状態として診断を保留します。 その後、病前性格、生育環境、現在のストレス状況、遺伝負因(家族の精神障害の有無)、ストレスがなくなった時に回復するかどうか(うつ病ではストレスがなくなっても症状が改善しません)、薬に対する反応性などを調べ、時間をかけて診断していきます。精神科で最も多い状態は“抑うつ状態”です。気分の落ち込み、意欲の低下、集中力低下、食欲低下、疲労感、不眠などの症状を認めます。しかし、多くの精神疾患が抑うつ状態を呈するため(下図3)鑑別診断が必要です。